ではこの種のテストで,時間の空間的可視化について何がわかるのだろう?マーク・プライスという研究者がノルウェーのベルゲン大学で,時間と空間の共感覚を持つ被験者に,1年の月がどう並んでいるか図を描かせた。その後,被験者をコンピューターの前に座らせ,1月から12月のどれかをランダムに画面に映し出す。このときは文字に色はついていなかった。被験者への指示は,ただ1年の前半の月に割り当てられたキーと,後半の月に割り当てられたキーを押すことだけだ。そこでプライスは次のようなことに気づいた。その人の頭の中にある1年の地図で3月が左上にあった場合,前半の月に割り当てられたキーが,キーボードの左側にあるときのほうが速く打てる。けれども前半の月のキーがN(右手側の隅)だと,打つのが遅くなる。地図のことは被験者には告げないし,理論的にはキーがどの位置にあっても同じスピードで反応するはずだ。けれども彼らはどうしても地図を思い浮かべてしまうため,自分の地図と一致するキーには速く反応できるのだ。
クラウディア・ハモンド 度会圭子(訳) (2014). 脳の中の時間旅行:なぜ時間はワープするのか インターシフト pp.107
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