これらすべてに,ややわかりにくい要素がある。私たちの時間と空間の見方は,対称ではないということだ。誰かに3つ並んだ電球を見せて1つずつ点灯する。1つが点灯してから,次の電球が点灯するまでの時間がどのくらいだったか評価してもらう。すると電球の間の距離が離れているときのほうが,次の電球が点灯するまでの時間が長いと答える。これは“カッパ効果”として知られている。いくつもの点がコンピュータ画面上を動くのを見る研究とよく似ていて,時間と距離を逆にしても成り立つ。電球を1つずつ点けるのは同じだが,電球と電球の間の距離を尋ねると,すばやく点灯させたときのほうが,距離が短いと感じる。こちらは“タウ効果”と呼ばれる。ライオンは大きいという知識から,おそらく速く走れると思ってしまうように,スピードと距離についての知識を無視するのは難しい。そのため,速い=近いと思ってしまうのだ。しかしボロディンスキーとカサントが,空間と時間の関係のアンバランスさを指摘した。私たちは空間を時間の言葉で考える以上に,時間を空間の言葉で考えている。これで1回りして,また言語と「4分の長さの道路」といった表現がないという話に戻ってくる。
クラウディア・ハモンド 度会圭子(訳) (2014). 脳の中の時間旅行:なぜ時間はワープするのか インターシフト pp.118
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