中年になっても,予期的に時間を評価した時の1時間はいつも通りの速さで進み,1日が過ぎる速度も変化はしない。人は1ヵ月や1年が過ぎるのが速すぎるとショックを受けることはあっても,1時間が速く過ぎるようになったとは感じない。時間の流れの目印は,年月が過ぎるのを常に私たちに知らせてくる。ベルリンの壁崩壊からもう20年が過ぎたと聞いて,私たちは驚く。自分が今も使っている物が,ヴィンテージ・ショップで売られているのを発見する。何よりもショックなのが,90年代生まれの同僚たちの存在だ。彼らはまだまだ学生のはずなのに!こういった目印が知らせる経過時間と,私たちが新たな記憶の数をもとに追想的に評価した経過時間は,大きく食い違う。中年以降は新たな経験の数が少なく,したがって新たな記憶の数も少ないため,私たちは予期的に評価した経過時間と,追想的に評価した経過時間とのずれを何度でも感じる。
クラウディア・ハモンド 度会圭子(訳) (2014). 脳の中の時間旅行:なぜ時間はワープするのか インターシフト pp.185-186
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