つまり私たちの脳は常に働いていて,考えられうる将来を想像しているのだ。ではなぜ休めるチャンスに休もうとしないのだろう?もし脳がこれから起こることや具体的な計画についてずっと考えているのなら,将来についてとりとめもなく考えてしまうのも理解できる。しかし私たちは,実際にはほぼ起こらないような状況(本当に起こったら人生を変えるような大事件)を思い浮かべている。白昼夢が将来を考える助けとなる場合があるのは間違いない。しかしハーバード・メディカル・スクールのモッシュ・バーは,さらに踏み込んだ主張をしている。彼は白昼夢の効果は,間接的なものだと言う。白昼夢により起こっていないことの記憶が生まれるが,それはその記憶が必要になったときの備えだというのだ。飛行機に乗ろうとしている人はだれでも,墜落したらどうなるか考える。本当に墜落したとき,たとえ白昼夢のようなとりとめもないことでも,前に飛行機に乗ったときの経験からあれこれ考えたことが,命を救う役に立つかもしれないというのがバーの考えだ。
クラウディア・ハモンド 度会圭子(訳) (2014). 脳の中の時間旅行:なぜ時間はワープするのか インターシフト pp.215-216
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