ナルシシストは,自分の周囲で起こることは,他人の言動も含め,すべて自分に関することだ,あるいはそうあるべきだと考える。思いどおりにならない状況でも,自分だけがしゃべり続けるとか,他人を見下した態度をとるなど,つねに自分がものごとの中心になるような行動を取る。
他人の要求や願望を気にかけるとか,相手の話に耳を傾けるとか,相手の関心と反応を得るために働きかけるといった選択肢がない。彼らにいわせれば,ナルシシストと呼ばれるのは必ずしも悪いことではなく,極端なうぬぼれは,完璧な存在である自分自身へのごく自然な反応にすぎないという。ナルシシストは,自分の才能や長所は,自ら背負うべき重荷だとさえ言いかねない。
ナルシシストは決まりきった行動しかとれない場合が多いが,ほかのパーソナリティ障害と同様に,時間をかけて,だれかにサポートしてもらえば,自分の行動や他人に及ぼす悪影響をある程度改めることができる。周囲にとっていちばん厄介なのは,彼らの自己愛的な性質,とりわけ,共感の欠如と特権意識が,反社会的で有害な行動に変わっていくことだ。これは,攻撃的なナルシシズム,あるいは悪性のナルシシズムと呼ばれ,このような状態になると,サイコパスと見分けるのが困難になる。
ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.62-63
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