もちろん,すべてのサイコパスが遊び暮らしているわけではない。だが,サイコパスは,健康に何の問題もなく,自活できる状況にあっても,平気で他人を利用する。定職についているサイコパスでも,何かと他人にたかりたがる。同僚だろうと上司だろうとお構いなしだ。
共感能力のないサイコパスは,おそらく,きわめて基本的な感情さえ持ち合わせていない。自分の身勝手な行動が他人に及ぼす経済的,感情的な影響には無頓着で,この弱肉強食の世界で生きている人々は,自分と同じように貪欲で非情だと思い込んでいる。また,彼らは他人の感情を正確に読み取れず,人は誰しも自分と同じように深みがなく無味乾燥な感情しか持っていないと決めつけている。
サイコパスの精神世界では,自分以外の人間は皆,単なる物体か,標的か,障害物でしかない。さらにサイコパスは,自責の念や罪悪感を覚えることもない。一般の人々は他人を利用したり操ったり傷つけたりすることを妄想こそすれ,実際にそれを行動に移すのを思いとどまらせる道徳観念を持っているが,サイコパスにはそれがない。サイコパスは,良心から生じる疑念や懸念に苛まれることがないので,腕の良い捕食者になれるといえるかもしれない。
ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.68-69
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