反省させるだけだと,なぜ自分が問題を起こしたのかを考えることになりません。言い換えれば,反省は,自分の内面と向きあう機会(チャンス)を奪っているのです。問題を起こすに至るには,必ずその人なりの「理由」があります。その理由にじっくり耳を傾けることによって,その人は次第に自分の内面の問題に気づくことになるのです。この場合の「内面の問題に気づく」ための方法は,「相手のことを考えること」ではありません。親や周囲の者がどんなに嫌な思いをしたのかを考えさせることは,確かに必要なことではありますが,結局はただ反省するだけの結果を招くだけです。私たちは,問題行動を起こした者に対して,「相手や周囲の者の気持ちも考えろ」と言って叱責しがちですが,最初の段階では「なぜそんなことをしたのか,自分の内面を考えてみよう」と促すべきです。問題行動を起こした時こそ,自分のことを考えるチャンスを与えるべきです。周囲の迷惑を考えさせて反省させる方法は,そのチャンスを奪います。「しんどさ」はさらに抑圧されていき,最後に爆発,すなわち犯罪行為に至るのです。
岡本茂樹 (2013). 反省させると犯罪者になります 新潮社 pp.76
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