日本は諸外国に比べて研究補助者が少ない。だから,大学院生やポスドクが様々な作業を行わざるを得ず,研究時間が少なくなってしまう。研究者たちに研究そのものに専念してもらうためにも,研究補助者はとても重要な職なのだ。諸外国では,研究補助者を優遇し,1つのキャリアとしてしっかりとした地位を与えているという。日本の大学などにもかつて「技官」と呼ばれる職があった。いわば技術者,職人として,研究者の様々な要望に応え,敬意を集めていた。
ところが,現代の日本の研究補助者には大きな問題がある。理研のテクニカルスタッフを経験した友人によると,テクニカルスタッフは単年度雇用の繰り返しで,不安定かつ立場は弱い。上司であるチームリーダーなどの意見に逆らえない。また,単純作業の繰り返しで,スキルアップも出来ない。どんなに貢献しても論文の筆頭著者になることはできない。口約束で論文書かせてやる,と言われても,反故にされてしまうこともあったという。
榎木英介 (2014). 嘘と絶望の生命科学 文藝春秋 pp.58
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