なぜ研究不正はいけないのか。あまりに当たり前過ぎて,改めて問われると戸惑うかも知れないが,ここをはっきりしないといけない。
研究不正がいけないのは,人びとに損害を与えるからだ。
ウソの研究成果が発表されれば,そのウソを引用して,別の研究成果が生まれる。その研究成果がさらに別の研究成果を生み出す。ウソから生まれた研究は全てウソになる。
ウソの研究は役に立たない。いや,それならまだましだ。ときに害を与える。
ウソの研究と,それを引用した研究にかかった費用が無駄になる。
ウソの研究で作られた製品は役に立たない。
ウソの研究をもとに研究を行った時間が無駄になる。ウソの研究に基づいた研究計画が無駄になる。
ウソの研究に期待した人たちががっかりする。
ウソの研究で地位を得た人に邪魔された人の活躍の場がなくなる。
ウソの研究を調査する人たちの時間が失われる。
ウソの研究は人びとの健康や財産を脅かす。
だからウソはだめなのだ。
榎木英介 (2014). 嘘と絶望の生命科学 文藝春秋 pp.161
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