ターマンは,人間の可能性を評価するための研究道具のひとつとして知能検査を用い,目的に合わせて修正した。フランスの心理学者,アルフレッド・ビネーが創案した初期のバージョンはもっと教員向けのもので,特別授業が必要な子どもを識別し,必要に応じたより良い教育を与えるための手段だと考えられていた。しかし,ターマンの考えは違った。それほど同情的でなく,おそらくもっと臨床的な見方をしていたのである。彼はもっと純粋に分析能力に特化したテストに作り直した。改訂版では,三角形の角度を考える能力や,異なる速度で駅に近づいている2台の電車についての有名な問題などを解く能力を測定する。ターマンは,生徒が適切な教育を受けているかどうかを判断することにはあまり興味がなかった。関心があったのは,生まれつきの知能や,難しい問題を解くことができる生来の才能だった。いつの日か,自分のテストを使って,社会が人々を才能に応じて分類できればいいと願っていた。そうすれば,子どもたちは才能に応じた教育が受けられるようになるだろうし,賢い者はもっと賢くなれる。教え方の改善が重要な問題だとは思っていなかった。正直なところ,人には生まれつき才能があるかないかのどちらかしかないと信じていたからである。
デボラ・ブラム 藤澤隆史・藤澤玲子(訳) (2014). 愛を科学で測った男 白楊社 pp.42
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