ボウルビーの見解は,彼の知っているほぼ全員を怒らせてしまった。アンナ・フロイトは彼を完全に追放した。嘆くという感情が持てるほど乳児に「自我が発達している」という点に,彼女は強い疑念を抱いたのだ。クラインは,赤ちゃんが悲しそうに見え,「抑うつ」段階を通過することは認めたが,それは母親を恋しがっているのではなく,正常な発育なのだと述べた。彼女の主張によれば,ボウルビーが見ているものはすべて性的緊張に対する反応であり,おそらく去勢に対する恐怖と,威圧的な両親に対する怒りだろうと主張した。英国精神分析協会が愛着理論とその創始者をあまりにも目の敵にしたので,ボウルビーは会合に行くのをやめてしまった。「彼の論文は読まれず,引用されず,見られなくなったので,彼は精神分析の世界に存在しないことになってしまった」とカレンは述べている。
デボラ・ブラム 藤澤隆史・藤澤玲子(訳) (2014). 愛を科学で測った男 白楊社 pp.86
PR