やがてパヴロフは,「条件反射」の科学を確立した。イヌは,食事と足音を関連づけることを学習していたのだ。パヴロフは残りの人生を費やして,そうした条件づけ行動に関する実験をおこなった。ワトソンが心から感銘を受けたのは,パヴロフがイヌの脳の中で何が起こっているかを推測しようとしなかったことである。それは内的過程なので,測定できないと考えたのだ。イヌが足音を「認識している」ということすら認めなかった。認識という脳の活動は検証できないので,「不必要に推論を巡らすことになる」とパヴロフは主張した。彼はイヌを条件づけて,音に反応してよだれを垂らすようにさせられることを証明した。それは,脳は訓練できるということを意味しており,それ以上でもそれ以下でもない。この秩序だった観察に基づいた科学こそ,まさにジョン・ワトソンがアメリカの心理学に求めているものだった。ワトソンは,パヴロフのことを思い浮かべては,「どんなに偉大なものでも平等に扱おう」と心に誓うのだと述べている。
デボラ・ブラム 藤澤隆史・藤澤玲子(訳) (2014). 愛を科学で測った男 白楊社 pp.101-102
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