愛することも考えることもできない機械仕掛けの動物は,ジョン・B・ワトソンのような初期の行動主義心理学者の教義とうまく合致した。しかし,さらに大きな弾みをつけたのは,ハーヴァード大学を卒業した心理学者で,おそらくハリーの世代でもっとも有名な心理学者であるバラス・フレデリック・スキナーだった。世界的にはB・F・スキナー,友人にはフレッドと呼ばれたスキナーは,動物には感情がないという断固たる信念を持っていた。かつて,彼が愕然としたことがある。木の実を夢中で食べるリスを見た友人が,リスはどんぐりが「好き」なんだねと言ったのだ。言うまでもなく,そんなことはありえないとスキナーは返答した。動物が何かを好きになることはない。好きというのは感情だが,リスに感情などないからだ。スキナーは自らを新行動主義心理学者と称し,それまでの科学を洗練させた新しい心理学の作り手だと自認した。
デボラ・ブラム 藤澤隆史・藤澤玲子(訳) (2014). 愛を科学で測った男 白楊社 pp.131
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