ハリーの実験で,針金の母と一緒のときに探索するのも触るのも周囲を見ることさえ怖がっていた子ザルは,不安定(または不安定な愛着)の完璧なケーススタディと言えるだろう。数年後の1960年代初頭,エインズワースは実際に子どもを使ってそのような反応をテストし始めた。彼女(と夫)はアフリカを離れ,ジョンズ・ホプキンス大学で研究しはじめていた。メリーランドでエインズワースは,ある観察計画を立案した。親に対する子どもの愛着の仕方を観察し,それが安定した関係によるものか,あるいは脆弱な関係によるものかを調べようとしたのである。彼女の「ストレンジ・シチュエーション」テスト(オープン・フィールドテストと概念的にはそれほど変わらない)は,綿密に設計され,詳細に測定された。ハリー・ハーロウやジョン・ボウルビーと同様にメアリー・エインズワースも,心理学界で注目されるためには,研究が徹底的でなければならないことを実感していた。
デボラ・ブラム 藤澤隆史・藤澤玲子(訳) (2014). 愛を科学で測った男 白楊社 pp.219-220
PR