ボウルビーが母親についての研究を始めた1947年,幼い子ども(6歳以下)のいる母親のうち,外で働いていたのはたった12%だった。1997年,その数字は64%にまで上昇した。親子を隔てよというジョン・ワトソンの指示を今でも信じるなら,この統計には何の問題もない。おそらく,健全な傾向を示していると評されることだろう。しかし,そのような見方を変えた科学者たち——スピッツ,ロバートソン,ボウルビー,エインズワース,ハーロウをはじめ,数えきれないくらい大勢——のおかげで,私たちは親子を隔てる距離によって,心にぽっかりと穴が空くのではないかと気にするようになった。拡大した育児は社会実験だと気に病み,どんな実験にもつきまとうリスクを心配する。私たちが育てている世代の子どもは,両親との結びつきが非常に緩いために,社会的連帯感を欠くようになるのではないか,という恐怖心が心にのしかかる。もっとも,ジョン・ワトソン以外に,絆の断絶を画策する者などいまいと論じることもできるが。
デボラ・ブラム 藤澤隆史・藤澤玲子(訳) (2014). 愛を科学で測った男 白楊社 pp.356
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