健康に悪いとはっきり証明されていることは,じつはそんなに多くない。ここで,健康に直接悪い影響を与えるとわかっているものを種類に分けて見ていこう。
1つは,一定量以上の毒物だ。タバコの煙,鉛などの重金属,農薬,汚染された大気は,体内に摂取すると細胞が死滅して内蔵がダメージを受けることがわかっている。
そして2つ目は放射線だ。放射線を浴びすぎると,気分が悪くなるだけでなく,実際に亡くなってしまうこともある。放射線の発生源は,地下室のラドンかもしれないし,核爆弾の死の灰や核廃棄物かもしれない。または医療用のX線も浴びすぎるのも危険であり,特にCTスキャンには気をつけなければならない。放射線の被曝量は蓄積していくので,被曝するたびにリスクが大きくなっていく。
3つ目は,悪性の感染病だ。ある種のウィルス,バクテリア,菌は,感染すると体の免疫機能を打ち負かしてしまう。じつは,医療がいちばん力を発揮するのがこの分野だ。ワクチンや薬は,感染症の治療で実際の効果を上げることができる。
交通事故で頭蓋骨を骨折する,溺れて窒息する,銃で撃たれて動脈が切れるなどの外傷も,健康に直接的な悪影響を与える。ここでも外科手術や救急救命医療が大きな助けになってくれる。
しかし,はっきりと悪影響があるとわかるのもこれぐらいだ。ここから先は,とたんに白黒がはっきりしなくなっていく。
ハワード・S・フリードマン,レスリー・R・マーティン 桜田直美(訳) (2012). 長寿と性格:なぜ,あの人は長生きなのか 清流出版 pp.237-238
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