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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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健康と長寿の誤解

健康政策を作る人たちも,私たち一般人も,健康と長寿に関しては2つの大きな誤解をしている。
 1つは,家系を必要以上に重視することだ。たしかに背の高さは両親から受け継いだ遺伝子でほぼ決まっているだろう。また,ある特定の病気になりやすい家系も確実に存在し,遺伝が原因だとはっきりしている病気があるのも事実だ。だから,家族の病歴を知っておくのは,どんな検査を受ければいいか,どんな症状に注意すればいいかを判断するうえで,とても大切なことだと言えるだろう。しかし家族の病歴からは,心臓発作を起こすかどうか予測することはできないし,寿命を予測することもできない。やはりいちばん大切なのは,自分自身の生き方である。
 もう1つの誤解は,健康にいいことをリストにすれば,健康状態を向上させられると考えることだ。
 医師たちは,よくこんな愚痴を言っている。「バランスのとれた食事,喫煙,減量,充分な睡眠,運動などなど……これが健康にいちばんいいのはよくわかっていますよ。でも患者が言うことを聞いてくれないんです。だからどうしても薬に頼ってしまうんです」
 たしかに医師たちの言うとおりなのだろう。健康になるためのリストを渡されて,それを忠実に実行する人などまずいないからだ。ところが,健康長寿を実現したターマン研究の男女はそんなリストなんて見たこともなかったが,それでも健康的な生き方のパターンを確立していた。
 現代の健康政策は,健康リスクや病気にばかり注目している。そして医師たちは,健康政策で指摘された問題を修復しようとする。もちろん何度も言っているように,実際に病気の症状が出ているのなら,そのための治療は大きな助けになる。現代医療が最も効果を発揮するのはこの分野だろう。
 しかし問題の修復は,本来は健康政策のほんの一部であるべきだ。それなのに現在では,この一部にだけ注目が集まり,健康で長生きできる生き方のパターンという,より包括的な視点が完全に欠けてしまっている。

ハワード・S・フリードマン,レスリー・R・マーティン 桜田直美(訳) (2012). 長寿と性格:なぜ,あの人は長生きなのか 清流出版 pp.243-244
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