フェイスブックに先駆けること25年以上前,社会学者でスタンフォード大学教授のマーク・グラノヴェッターは,最初にして,もっとも有名になったソーシャル・ネットワークについての研究を発表しました。彼はネットワークがいかにして社会移動性を育むかという点,いかに人を新たなチャンスに導くかという点に興味を持っていました。そして,ボストン近郊で転職した人たちを調査した結果,仕事探しを助けてくれたのは,(もっと助けてくれそうな)親しい友人でも家族でもなかったことがわかりました。新しい仕事の4分の3以上が,むしろ「たまにしか」,あるいは「めったに」会わない人物のつてによってもたらされたのです。この結果をもとに,グラノヴェッターは「弱い紐帯の強み」と題する画期的な論文を世に問いました。あまり親しくない知り合いの持つユニークな価値についての論文です。
グラノヴェッターによると,すべての人間関係やつながりが同じ重みを持つわけではありません。ゆるいものもあれば強いものもあり,つながりは,ときと経験とともにさらに強化されます。だれかといっしょにいればいるほど,絆は強まります。なぜなら,おそらく,わたしたちは経験と信頼を分かち合うからです。子供時代においては,強いつながりとは,家族と親友のことです。20代における強いつながりは,都会派ルームメイト,パートナー,親密な友人たちとのあいだで育っていきます。
ゆるいつながりとは,わたしたちが会ったことのある,あるいは最近は会ったことがなくても,なんらかの関係や縁故がある相手を言います。ただし,目下あまり付き合いのない,よく知らない人です。具体的に言うと,ふだんはあまりしゃべらない職場の同僚であったり,外であいさつを交わすだけの隣人だったりするでしょう。また,いつか会う機会があるかも知れないけれど,まだ一度もその機会を得ていないという知人です。そういう人をだれでも1人や2人は知っていると思います。もう何年も連絡をとっていない友人の場合もあります。さらに,以前の雇い主や大学の恩師も考えられます。つまりは親密な関係を築いてこなかった人びとすべてです。
メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.58-59
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