自分の可能性の追求を,精神分析家のカレン・ホーナイは「栄光の追求」と名付けました。栄光を追求する時,わたしたちは現実よりも理想に目がいってしまいます。たとえばエンジニアがもてはやされる時代なら,必要な資質や技能を知らないまま,人はエンジニアに憧れがちです。親は子供の個性を重視するよりも,こうあるべきだという理想を押し付けます。フェイスブックのユーザーは,現実の姿よりもサイト上の姿がよく見えなければならないという暗示にかかっています。このように理想ばかり追っていると,人は真の自己や世界から遊離してしまいます。
自分が可能性の実現に向かって努力しているのか,それとも栄光の追求にふけり,たんに理想にこだわっているのかがわからなくなるクライアントが多く見受けられます。しかし,たんに栄光の追求をしているだけなのかどうかは,簡単に見分けられます。そういう人は,ホーナイが言う,<べき>の専制に支配され,あおられているからです。
メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.90-91
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