他者と明確に区別できることはアイデンティティの基本です。わたしたちは自分と他者の境界をはっきりさせることによって個性を発展させます。まわりの人と違うからこそわたしという人間なのです。わたしとまったく同じ人生を歩む者,歩める者はいません。差異はわたしたちの個性です。人と違うことが人生に意味をもたらします。
しかし「差異」はシンプルです。黒を説明するいちばんやさしい方法は,白と反対の色,と言えばいいのです。わたしたちが自分について最初に知るのは,自分はこれこれであるではなく,これこれでないによる場合が少なくありません。これではない,あれではないとしてわたしたちは自分を特徴づけます。自分は1日中机に向かっていたくないと,アイアンが即座に答えたようにです。しかし自己規定はそこで終わりというわけには生きません。1つのアイデンティティやキャリアは,自分はこれこれでないという否定を中心にして成り立ってはいません。ネガティブなアイデンティティから,あるいは自分は違うという感覚から,ポジティブなアイデンティティ,自分はこうだという感覚へとシフトする必要があります。これには勇気がいります。
メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.102-103
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