心理学者は人の幼児期の記憶にばかり注意を向けがちです。幼児期は重要ですが,わたしは高校での出来事のほうに,もっと注目しています。高校時代と20代は自己決定にいちばん関わる経験をする時期というだけでなく,自己を決定する記憶がもっとも形成される時期でもあります。これは,多くの研究でわかってきたことです。
青年期は,人生のストーリーを形成するための最初の試みをたくさんする時期です。抽象的思考に対する関心が生まれ,それができるようになると,自分が何者か,その理由は何かなどについてのストーリーを考え,まとめ始めるのです。10代から20代にかけてソーシャル・ネットワークが広がるにつれて,わたしたちは自分についてのストーリーを,他者や自分自身に繰り返し伝えますストーリーを用いて,変化しても首尾一貫した自分であることを確認するのです。
自分についてのストーリーは,アイデンティティの結晶体です。結晶体にはそれぞれの人固有の複雑な個性が詰まっています。それぞれの友だち,家族,そして文化の情報も詰まっています。年年歳歳,私たちが生きている理由について何かを語ってくれます。
メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.161-162
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