最近特に増えているのは,「正義」を振りかざして相手を追求するやり方だ。たとえば,芸能人の家族が生活保護を受給しているということを知るやいなや,「けしからん。この税金泥棒!」といった具合に相手を攻撃する。ここまでならまだ序の口だ。徹底的に糾弾するにはそれだけでは足りないと,その芸能人の出演番組のスポンサーに「降板させろ」という抗議を申し入れたり,芸能人の過去の発言を掘り起こして発言の矛盾を指摘したりと,相当な労力をかけてまでその人を攻撃しようとする。
たしかに,生活保護は必要な人に正しく支給されなければならない。そして不正受給が後を絶たないという問題に一石を投じたという点では意味があることだった。しかし,この騒動が起こるまで,その問題と向き合っている人はどれだけいただろうか。また,騒動後も継続してこの問題と向き合っている人はどれだけいるだろうか。当時攻撃していた人たちの目的は,社会問題の根本解決にあったのではなく,自分の攻撃欲を満たすことにあったのではないかと思われる。
実際,この騒動が収まると,次は芸能人の不倫騒動,人気アイドルの男性との交際騒動と,攻撃ターゲットはめまぐるしく変わっていった。すべての騒動に参加している人がどれだけいたかは知らないが,他人の悪を叩いた人は総じて次のような快感を得たのではないだろうか。
「悪を叩いてスッとした。楽しかった」
片田珠美 (2013). 他人を攻撃せずにはいられない人 PHP研究所 pp.136-137
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