「受動」という言葉からもうかがえるように,受動攻撃性は,攻撃行動でありながら,相手に対して露骨な攻撃を加えるような真似はしない。まるで心理ゲームのかけひきをくりひろげるかのように,相手に対して仕返しを重ねていくのがこのタイプ特有のふるまいだ。
たとえば,相手への強力をわざと拒む。無視する。ふてくされた態度で聞えよがしに文句を言いつのる。相手に頼まれた要件は,偶然を装ってわざと“忘れる”ことも少なくない。それもこれも本人の怒りがなせるわざであり,相手の願いを聞き入れるつもりなど,このタイプの人たちは最初からもちあわせていないのだ。
潜在的攻撃性はこの点で対照的だろう。その攻撃意図を隠したままで,きわめて“能動”的に相手に攻撃を加えようとする。周到に考え抜かれ,狡猾このうえない方法で相手に応じて自分の望みを果たしたり,あるいは相手との関係を思いのままに操作しようとしたりするが,真意を悟られるような真似は徹底的に避けようとしている。
ジョージ・サイモン (2014). 他人を支配したがる人たち 草思社 pp.25-26
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