自己評価(セルフ・エスティーム)と自尊心(セルフ・リスペクト)については,双方のちがいをはっきりさせておくことが肝心だ。自己評価の評価(エスティーム)は,「見積もる(エスティメイト)」という言葉に由来している。自己評価とは自分に対する直感的な“見積もり”であり,その見積もりとは,人生において望みのものを手に入れるために必要な,生まれつきの才能や力量,また成功体験を本人がどのように評価したかで成り立っている。
自力で何をなしとげられるか自覚している者,望みのものを得る力量に自信を抱いている者は強気の評価をみずからにくだせる。だが,それが真の自尊心をはぐくむかといえばそうではない。
自尊心(セルフ・リスペクト)の「リスペクト」のそのものの意味は「回想」「追想」,つまり自尊心とは,過去にさかのぼって自分が好ましいと感じているものの評価に由来する。自分が積み重ねてきた努力,社会的に望ましいとされている目的への献身,運のあるなしにかかわりなく,みごとに達成できた業績などに根ざしているものなのだ。
簡単に言えばつまりこうなる。自己評価の感覚は現在の自分に対する自覚から生まれ,自尊心の思いは,与えられた条件のもとで自分がなしとげたことによって決まる。
ジョージ・サイモン (2014). 他人を支配したがる人たち 草思社 pp.147-148
(引用者注:self-esteemを「自尊心」,self-respectを「自己尊重」と訳すこともある)
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