“重要な言葉を伝えずに嘘をつく”方法は,マニピュレーターがよく使う手であり,きわめて見破りにくい。同じように,“事実をねじまげて嘘をつく”方法がある。真相の大半をわざと伝えず,あるいは肝心の部分をゆがめて伝え,相手には事の真相を秘密のままにしておく。はなはだしい例では,事実だけを並べたて,嘘をでっちあげた強者がいた。真実だけを口にしてどうやって嘘をつくことができるのかといえば,話のポイントや全体像の理解に不可欠な事実を“言い忘れる”ことで相手をだましていたのだ。
事実を巧妙に歪曲する方法のひとつが意図して意味を曖昧にしておくというもので,マニピュレーターが好んで用いる策略である。ストーリーは念入りに組み立てられているため,聞かされたほうは話の全貌を知り得たという印象を抱くが,きわめて肝心な部分が抜け落ちているので,本当の全体像など知ろうにもその手立てはない。
ジョージ・サイモン (2014). 他人を支配したがる人たち 草思社 pp.165-166
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