3年後,高名な法学教授であるチャールズ・マコーミックは,「しかるべき」科学の専門家ということばに最もふさわしいと思える正統派の心理学研究者らを対象に,意見調査を実際におこなった。質問に回答を寄せた38名の科学者のうち,18名が嘘発見器の検査結果を裁判官と陪審員に示すことに一定の賛意を示し,13名が反対した。残りの7名は「どちらとも言えない」考えを持っていた。熱心な賛成派にはウィリアム・マーストン,ロバート・マーンズ・ヤーキーズ,そしてノースウェスタン大学学長の産業心理学者ウォルター・ディル・スコットらが名を連ねた。反対派には,嘘発見の技術は「あと25年は研究室の中にとどまるべきものだ」と述べた行動主義心理学者ジョン・B・ワトソンらの権威がおり,その中にはマーストンとラーソンの成功は個人的能力によるものであって,心理学そのものの成果ではないと主張する者もいた。また,嘘発見器のいかにも科学を感じさせる大がかりな装置が,陪審団に過大な信頼をいだかせてしまうのではないかと懸念する心理学者もいた。
ケン・オールダー 青木 創(訳) (2008). 嘘発見器よ永遠なれ:「正義の機械」に取り憑かれた人々 早川書房 pp.96
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