表向き,イリノイ州で逮捕された者はただちに裁判官の前で弁明する権利があった。暴力による脅しも禁じられていたし,自白の強要が明らかになれば有罪判決も覆された。だが実際には,警察は過酷な取り調べを繰り返して自白を引き出した。容疑者を眠らせず,「金魚」部屋に連れて行って腹をゴムホースで打ち,顔を水に漬け,すねを蹴り,金魚が見えてくるまでシカゴの電話帳で頭を殴りつづけた。報告書には,シカゴの電話帳は「分厚い本である」とわざわざ記されている。
国際警察署長協会の面々は,自分たちの行状への非難に憤った。報告書は「警察職務に対する過去半世紀で最大の攻撃」であるとし,言われているような第三度(サード・ディグリー)の存在を否定した。ただし第三度なしでは職務を果たせないとも主張している。痛めつけるのは罪を犯したのが明らかな者のみであって,警察署の断固たる正義が犯罪を抑止し,容疑者から自白を引き出して犯罪者が法の網から逃れるのを防いでいるのだと訴えた。シカゴのある警官は,第三度なしでは署の仕事の95パーセントが無駄になるだろうと述べた。
ケン・オールダー 青木 創(訳) (2008). 嘘発見器よ永遠なれ:「正義の機械」に取り憑かれた人々 早川書房 pp.162-163
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