それでもめげなかったマーストンは,1930年代末には一般大衆に取り入る新たな手段を見つけ,女性誌に「大衆向け心理学」の記事を書いて自分の理論を売り込み,向上と適応を説く科学者兼伝道師になった。「人生に挑戦しよう」がキャッチフレーズだった。マーストンが開発し,いまも根強く残っているものに,誌上心理検査がある。マーストンの検査は,支配欲と服従欲を分析し,読者が家庭や職場にうまく順応できるようにするためのものだった。今日,それはDISC理論と呼ばれており(主導[ドミナンス]のD,感化[インフルエンス]のI,安定[ステディネス]のS,慎重[コンシエンシャスネス]のC),販売元はいまでもこんなふうに大々的に宣伝している。「世界で最も長い歴史を持つ最も信頼性に富む独自のアセスメントツールで,5000万人以上が利用し,生活や人間関係や仕事の能率やチームワークやコミュニケーションを改善するのに役立てられています」。
ケン・オールダー 青木 創(訳) (2008). 嘘発見器よ永遠なれ:「正義の機械」に取り憑かれた人々 早川書房 pp.263-264
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