たとえば,知能テストなどをしてみると,世代の違いが如実に表れます。現在の90歳代の方たちには,知能テストというものを一度もやったことがなく,見たこともないという方がたくさんいらっしゃいます。そういう方に知能テストをしてもらうと,何を求められているのかを理解するのに時間がかかり,点数が低くなることがあります。
それに対して,70歳代の方たちは知能テストを見たことがあり,テスト慣れしているためか,問題を読むとササッと回答する方が増えます。
両者を比較したときに,70歳代のほうが90歳代よりも知能が高いといえるのか,それとも単にテスト慣れしているだけなのかの判断はとても難しくなります。世代の違う集団は,単に点数だけを比較してもわからないことがあるため,同じ集団を長期間にわたって追いかけていって調査する縦断的研究というものが必要になります。加齢による心理の変化を探り出していくことは,何十年単位での時間がかかる難しい作業なのです。
増井幸恵 (2014). 話が長くなるお年寄りには理由がある:「老年的超越」の心理学 PHP研究所 pp.51-52
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