超高齢者の幸福度を調べるために,私たちはインタビューで次の3つの側面をお聞きしました。
1つ目は老いに対する価値判断。歳を取っていくことをどのように受け止めているか。今の状況をどう受け止めているのかということです。
2つ目は孤独感の有無。孤独を感じていないかどうかです。
3つ目は感情の安定性。感情が安定しているか,嫌な感情を感じていないかという点です。
1番目の価値判断については,老いを良いものだとは思っていない方が大半です。「年を取って,役に立たなくなったと思うよ」と多くの方がおっしゃいます。「去年より体は悪くなったよ」という方もいます。
2番目の孤独感の有無では,孤独であることはわかっている,という結果が出てきます。「子供なんて全然来ないし,孫にもずっと会っていない」という方は少なくありません。
ところが,3番目の感情の安定性に関していうと,感情はとても安定しているのです。嫌な感情をたくさん感じているかというと,そんなこともありません。
「歳を取って役に立たなくなった,子供や孫にも会えない。だけど,嫌な気分はほとんどない。気持ちは落ち着いている。いいことがあるわけではないけれど,とても幸せな気分だよ」という感じです。
若い人の心理というのは,出来事と感情が密接に結びついています。「いいことあがあったから幸せ」「嫌なことがたくさんあったから不幸」というのが一般的です。
しかし,出来事と感情というのは,本来は原因と結果の関係ではありません。随伴するものではありますが,因果関係というわけではありません。超高齢の方と接すると,そういう本質的なことを思い起こさせてもらえます。
増井幸恵 (2014). 話が長くなるお年寄りには理由がある:「老年的超越」の心理学 PHP研究所 pp.91-92
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