長寿と一番関係が深いと考えられているのは「誠実性」です。「誠実性」というのは,几帳面で仕事が丁寧である,約束や人の期待を裏切らない,目標達成のために頑張る,仕事を最後までやり遂げる,犯罪に走らない,危険なものを求めない,といった性格傾向です。またこのような性格の人は自分に対する自信を持っていて,有能感も高い人が多いです。
誠実性の高い人は,健康行動をまじめに行います。運動習慣があり,食事を食べ過ぎず,過度な飲酒をしない,タバコを吸わないといった行動をとります。また,自己統制力が高く,規則正しく生活し,三食を食べ,早寝早起きを継続的に行える人が多いようです。病気になった場合でも,医師の助言をよく聞き,処方された薬をきちんと飲み続けることができるといわれています。ですから,結果的に長生きができると考えられています。
研究としては,児童期から前期高齢期までを対象としたフリードマン(アメリカの心理学者)らの研究,70歳代・80歳代を対象としたウィルソン(アメリカの心理学者)らの研究があり,いずれも誠実性が低いほうが早く死亡する傾向があることが示されています。日本の高齢者でも同じ結果が示されています。
よく「長生きの秘訣」といわれますが,多くの人はどうしたら長生きできるかということをだいたいわかっています。運動したほうがいいし,食べ過ぎないほうがいい。わかっているけれどもなかなかできないものです。誠実性の高い人は,わかっていることをきちんと,継続的に実行します。その結果長生きする傾向が出てくるということです。わかっていることを実行できるかできないかが性格によって左右されます。
増井幸恵 (2014). 話が長くなるお年寄りには理由がある:「老年的超越」の心理学 PHP研究所 pp.154-155
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