TOSSは教育技術の法則化運動(Teacher’s Organization of Skill Sharing)の略で教育研究家・向山洋一氏が主催する団体である。TOSSの特徴は教育内容のマニュアル化で小学校・中学校・高等学校などの教師が多数参加してその授業例を用いている。
しかし,その教材には「江戸しぐさ」の他にも,独自の「脳科学」に基づく家庭教育である「親学」,水に声をかけて凍らせると,言葉の美醜によって結晶の美醜が変わるという「水からの伝言」,意識の持ちようでホルモン分泌を操作し健康を増進するという「脳内革命」,特定の微生物を組み合わせることであらゆる汚染に対応できるというEM(有用微生物群),70年代の古代史ブームで注目されたが考古学的にはすでに否定されている縄文人南米渡来説など,科学的には怪しいものが目白押しである。
授業例では,それらについて子供たちは否定的情報を与えられず,教師が示す「証拠」に基づいて「自分で考え」,あらかじめ定められた結論にいたるという体験をくりかえすことで教育効果を上げることが示されている。
この団体の機関紙には,安倍首相をはじめとする自民党政治家のインタビューがしばしば掲載されており,TOSSのイベントではそれらの政治家の応援メッセージも寄せられている。
原田 実 (2014). 江戸しぐさの正体:教育をむしばむ偽りの伝統 星海社 pp.152-153
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