ゴットマンとその研究チームは,カップルが見せる複雑な行動を秒単位で仔細に観察し,その結果をもとに,幸福な夫婦と破綻する夫婦を予測した。まず研究室に被験者となる夫婦を呼んで,金銭やセックスなど夫婦関係で争点となる話題を話し合わせるという実験を繰り返した。夫婦が差し向かいで話し合う様子を録画し,なおかつ,心拍数などを測定する装置で身体的な変化も追跡した。そうして,被験者のふるまいを点数化したのちに,追跡調査をおこなって,結婚が続いているか,破綻したかを調べた。
ゴットマンの研究から得られた心理学的発見はひじょうに興味深い。ゴットマンとその研究チームは,被験者の夫婦の会話をもとに,結婚したままでいる夫婦と,離婚する夫婦を90パーセントの精度で予測したのだ。さらに,驚くべきことに,夫婦が問題点について話し合いをはじめてからわずか3分間の会話だけで予測した。大多数の夫婦では,話し合い開始直後の3分で,その後の会話がどんな方向に向かっていくか,完全に予測できるというわけだ。ゆえに,今あなたの目の前にいるカップルが,喧嘩をはじめるやいなや激しく非難しあって,不快そうな表情を浮かべているとしたら,その後もそれと同じ状態が続くと考えてまずまちがいない。逆に,問題点を話し合いながらも,肯定的な方向を目指して努力するカップルであれば,最後までその状態が持続する可能性が高い。
マシュー・ハーテンステイン 森嶋マリ(訳) (2014). 卒アル写真で将来はわかる:予知の心理学 文藝春秋 pp.93-94
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