高齢者から借りてきた写真を眺めるのは,意外にも楽しく,しかも,驚いたことに,写真は離婚を予測していた。何人かの人は幼少時代から青年期までの一連の写真を貸してくれた。のちに離婚した人に比べて,ひとりの相手と一生添い遂げた人は,写真の中で自然な明るい笑みを浮かべていることが多かった。そういう人たちの笑顔は,頬を持ち上げる筋肉だけでなく,目のまわりの筋肉——眼輪筋——も完全に収縮していた。その筋肉が収縮すると,目のまわりにしわが寄り,目尻にはカラスの足跡ができる。いわゆる“デュシェンヌの笑い”と呼ばれるものだ。そんなふうに笑っている人は結婚が長続きする確率が高い。離婚した人たちの笑顔は,目のまわりの筋肉が収縮していない傾向にある。キャビンアテンダント,あるいは,パーティーで無理してあなたと話している人の作り笑いに近い。
この実験にはさらに続きがあった。大学の卒業アルバムの写真を何百枚と検証して,そこに写っている人がどれほど本気で笑っているかを確かめてから,20代前半から80代後半までの卒業生に結婚が破綻したかどうかを尋ねたのだ。卒業アルバムの写真で満面の笑みを浮かべていた人に比べて,さほど笑っていなかった人の離婚率は5倍にのぼった。さあ,いまごろ,あなたは自分の昔の写真をかき集めているのではないだろうか?
マシュー・ハーテンステイン 森嶋マリ(訳) (2014). 卒アル写真で将来はわかる:予知の心理学 文藝春秋 pp.98-99
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