配偶者や子供,従業員や友人が嘘をついていても,態度や声から得られる手がかりはほんのかすかなものでしかない。声やそれ以外の複雑な手がかり——表情,ジェスチャー,間,顔が赤くなる,声の抑揚,言葉の選び方,うなずき,姿勢,まばたき,落ち着きのなさ,アイコンタクト,話す速度,脚の動き——を相手が発していても,あなたがそれに目を向けようとしなければ,何ひとつ気づかないこともあり得る。
さらに事態をややこしくしているのは,手がかりに気づいたと思っても,実際には,それは嘘とはなんの関係もなく,話者が不安を感じているだけかもしれない。殺人について警官に訊かれたら,嘘の達人だろうと正直者だろうと,不安のシグナルを発するものだ。そしてまた,さまざまな研究がおこなわれているにもかかわらず,嘘を見極める明確な合図は見つかっていない。ピノキオの鼻とちがって,嘘をついても,わたしたちの鼻は伸びないのだ。
マシュー・ハーテンステイン 森嶋マリ(訳) (2014). 卒アル写真で将来はわかる:予知の心理学 文藝春秋 pp.107
PR