合格者には,5段階ある。(1)博士論文審査資格者。(2)博士論文は(主査として)審査できないが,博士課程の講義は担当できる者。(3)博士課程の講義は担当できないが,修士論文は(主査として)審査できる者。(4)修士論文の審査は(主査として)できないが,修士課程の講義を担当できる者。(5)修士課程の講義も担当できない者。そして,(1)を「マル合教官」と呼び,教授名に◎の印をつける。
この結果は,そのまま公表されはしないが,やがて博士課程の講義,そして博士論文の審査が始まる2年後には,いや,外部から博士課程を受験する者もいるので,受験要綱を公表する1年後には,学生も他の教員たちも,具体的に誰が博士論文を審査できるのか,さらにそれぞれの講義担当教官の名前を見て,誰が博士課程の講義担当に不合格になったのか,わかるのである。
こうして,幾重もの偶然によって合否は決まるのであるが,不合格になった教員への風当たりは強く,「できれば,他の学科に移ってほしい」とか,「辞めてもらいたい」という声さえ聞こえてくるのであった。
中島義道 (2014). 東大助手物語 新潮社 pp.49-50
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