男性として生きていると,この社会がいかに男性に有利にできているかについて,忘れてしまいがちだが,認知能力で男性優位といわれているものの中には,こういった社会的な圧力がかかわっているものが多々ある。社会的な圧力を自覚していないものが安易に,「女性のほうが左右の脳をつないでいる脳梁が大きくて,左右の脳の情報交換が活発だから女性のほうがおしゃべり好きであり,上手である!」というような言説を行うのは実は非常に危険なのである。
実は脳梁の太さ,大きさに性差があるという見解も,科学的にそれを否定するデータもあるくらいであり,まだまだ確定した話として一般の人に広めることができるほど固まった話ではないのだ。実際,男女で脳梁の大きさに違いはないという報告が1997年にビショップらによってなされている。地図が読めない女性という認識も,ただ社会的な圧力が働いたせいで本来の能力を女性が発揮できていないだけである可能性があるのだ。
妹尾武治 (2014). ココロと脳はどこまでわかったか?脳がシビれる心理学 実業之日本社 pp.58
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