シンシア・プリーらは,勇気を「一般的勇気」と「個人的勇気」の2つに分類しています。一般的勇気とは,私たちが一般的に勇気について想像するものです。それは,人々を驚かせ感銘を与える,劇的かつ大胆な行為です。たとえば,負傷した仲間を救うために銃弾の嵐の中に飛び込んでいく兵隊,子どもを救うために凍るように冷たい川の中に飛び込む親,会社の不正を内部告発する従業員,熊に向かって叫び声をあげ,キャンプ場から追い払おうとするキャンパーなどです。
対照的に,個人的勇気は,「その個人にとって恐怖を感じる行為」を指します。他者が同じ行為をしても,必ずしも勇敢だと受け止められるとは限りません。
典型例が,飛行機に乗ることの恐怖です。飛行機恐怖症の人は,飛行機に乗り込む際,他の人がまったく苦にしない行為をするために,必死に自分を奮い立たせなくてはなりません。
個人的勇気とは,必ずしも他者のためにある必要はなく,自分自身にとって勇敢な方法で行動することです。人から見れば恐怖ではないことも,自分にとっての「個人的な恐怖に打ち勝つこと」を意味するのです。
ロバート・ビスワス=ディーナー 児島 修(訳) 2014). 「勇気」の科学:一歩踏み出すための集中講義 大和書房 pp.46-47
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