このような自己中心的な偏見によって,私たちは実際以上に物事が自分の思い通りになると考えてしまいます。そしてそれによって,問題や,ときとして悲劇を招いてしまうのです。少しばかり乱暴に言えば,私たちは世界が自分を中心にして回っていると考えています。そのため,人前でのスピーチを前にして緊張している人は,自分の服装やしゃべり方などを実際以上に注目されると勘違いし,飛行機恐怖症の人は,1秒間でもエンジン音が聞こえなくなったら飛行機が墜落してしまうのではないかと思い込みます。
仕事探しに不安を覚えている人は,間違った判断をすることで最悪の結果が生じるのではないかという考えにとりつかれています。
どのケースでも,私たちは恐怖によって現実の正しい姿が見えにくくなり,自分自身の狭い世界だけを見てしまうようになるのです。このように,恐怖には,私たちを自己中心的にさせてしまう性質があります。
ロバート・ビスワス=ディーナー 児島 修(訳) 2014). 「勇気」の科学:一歩踏み出すための集中講義 大和書房 pp.104
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