まず,準拠集団とは,人が態度や価値を決定する場合や行動指針を求める場合などに,判断の根拠を提供する社会集団のことです。そして,その人の属する準拠集団によって,その人のパーソナリティ・テストの結果も変わってくるのです。例えば,社会の流れに敏感で先進的な仕事を求められる職場と,とても保守的で変化を嫌う職場とでは,その職場に勤めている人自体が異なってくるわけです。そして,普通の人が,先進的な職場に勤めた場合,周りの人と比較して,自分はとても先進的ではないと考え,新奇性探究の得点が低くなったり,逆に,保守的な職場に勤めた場合,新奇性探究の得点が高くなったりするわけです。これをより大きな集団で考える場合,例えば国際比較をする際にも,同様のことがいえます。例えば,新奇性探究が高い人が多いと考えられるブラジルと,相対的には新奇性探究が低い人が多いと考えられる日本で,新奇性探求の得点を比較したところ,ほとんど差がなかった,という結果が得られています。おそらくは,ブラジル人のほうが日本人よりも新奇性探究の傾向が高いと考えられますが,ブラジル人は周りのブラジル人と比較して自分の傾向を判断し,日本人は周りの日本人と比較して自分の傾向を判断するからです。このように,パーソナリティ・テストの結果を判断する際には,その人がどういう集団に所属しているのか,ということも同時に判断しなければならないと考えられます。
木島伸彦 (2014). クロニンジャーのパーソナリティ理論入門—自分を知り,自分をデザインする— 北大路書房 pp.70-71
PR