私たちの幸福感には,どのような内発的報酬がもっとも必要とされるのでしょうか?決定的な定義はありませんが,関連する学術論文にはいくつかの鍵となる考え方や事例が何度も出てきます。私なりの分析では,ここ10年間のポジティブ心理学の内発的報酬に関する重要な知見は,大きく分けて4つの主要なカテゴリーに分類できます。
第1に,一番重要なこととして,私たちは,「満足のいく仕事」を日々求めています。この「満足のいく仕事」の具体的な性質は人によって異なりますが,すべての人にとってそれは,明確に定義された,レベルの高い活動で,自分の投じた努力の影響が直接目に見えてわかる仕事です。
第2に,私たちは,「成功体験,あるいは少なくとも成功への希望」を求めています。私たちは影響力の大きさを感じたいと思い,自分の得意なことを人に見てもらいたいと思います。私たちはまた,成功のチャンスについて楽観的に考え,何かに憧れ,時とともに何かがよくなることを求めています。
第3に,私たちは「社会的つながり」を求めています。人間は非常に社会的な生き物で,どんなに内向的な人であっても,幸福感のかなりの割合を大事に思う誰かと過ごす時間から得ています。私たちは経験を共有して,つながりを作り,他の人と一緒に何か大事なことを達成することを求めています。
そして最後に,私たちは「意味」や自分自身よりもなにか大きなものの一部になる機会を求めています。壮大な規模のものへの好奇心や,怖れ,疑問を感じる気持ちを求めています。さらには,私たち個人の生活を超える永久で重大な何かの一員となって貢献することを求めているのです。
これらの4種類の内発的報酬は,人間の最適な経験の基礎となるものです。これらは基本的な生存欲求(食・安全・生殖)以外で,もっとも強力なやる気の源です。そしてこの報酬すべてに共通しているのは,いずれも私たちを取り巻く世界や環境,他者,あるいは大義や自分自身よりも大きな活動に,深く関わる方法だということです。
ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一郎(訳) (2011). 幸せな未来は「ゲーム」が創る 早川書房 pp.76-77
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