ここに述べたことに共通するものは,二卵性双生児は一卵性双生児と同様に,周囲の環境からの影響を分ち持つ,という仮説である。もしこの仮説に妥当性がないなら,一卵性双生児が成長につれて互いに似てくるのは,一卵性双生児の環境の類似性のつよさを反映しただけのこととなる。確かに一卵性双生児が,二卵性よりも似たような扱われ方育てられ方をしていることには証拠がある。似た服を着るとか,いっしょに遊ぶ,同じ先生につく,同じ部屋で寝る,など似た環境に置かれている。両親が意識的にそう扱おうとするからである。しかし大切な点は,扱い方の相違が知能の重要な決定因となるか否かであろう。もし育て方の違いが知能指数に影響を及ぼさないならば,それは知能に無関係なものである。レーリンとニコルズは2000組の双子を対象に大規模な調査をしたが,そこで彼らは,扱い方の差はまったくIQに影響しない,ということを示した。すなわち,同じような扱われ方をした双生児のほうが,知的な能力においても似てくる,ということはなかったのである。
H・J・アイゼンク,L・ケイミン 齊藤和明(訳) (1985). 知能は測れるのか--IQ討論 筑摩書房 pp.81-82
(Eysenck, H. J. versus Kamin, L. (1981). Intelligence: The Battle for the Mind. London, Pan Mcmillan.)
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