コスターは,ゲーム業界で評判になった『「おもしろい」のゲームデザイン』A Theory of Fun for Game Design という著作で,ゲームは攻略し終えるまでが楽しいと主張しています。「ゲームの楽しさは攻略の過程から,そして理解しようとする過程から生まれる。ゲームは学習が麻薬となるのだ」だからこそ,ゲームにおける楽しさは,つねに成功できるようになると失われてしまうというのです。
これはある種の矛盾を含んでいます。ゲームは学習して攻略するためのものであって,上達していけば,最終的には成功を収めます。努力を惜しまないゲーマーはうまくならずにはいられません。上達すればするほど,挑戦の度合いが小さくなっていきます。難易度の高い面になると,挑戦度が上がり,「つらい楽しさ」の感覚はしばらくのあいだ続きます。しかし,プレイを続けるうちに上達していくので,超える必要のない障壁は,時間とともに障壁でなくなるのが必然なのです。
それゆえコスターは,「ゲームの宿命はやがてつまらなくなることにある。より楽しくなることではない。ゲームを楽しくしようとしているわれわれは,人間の頭脳を相手に勝てない戦いを続けているのだ」と指摘するのです。楽しさは,一度確かな成功をつかむところまで到達すると,退屈に形を変えていきます。こうしてゲームは消費可能になります。プレイヤーは,ゲームからすべての学習(と楽しさ)を搾り取ってしまおうとするのです。
ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一郎(訳) (2011). 幸せな未来は「ゲーム」が創る 早川書房 pp.102
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