経済を立て直す必要に迫られたとき,わたしたちは何が本当の回復なのかを忘れがちである。本当の回復とは,持続的で人間的な回復であって,経済成長率ではない。経済成長は目的達成のための一手段にすぎず,それ自体は目的ではない。経済成長率が上がっても,それがわたしたちの健康や幸福を損なうものだとしたら,それに何の意味があるだろう?1968年にロバート・ケネディが指摘したとおりである。
今回の大不況について次の世代が評価するときがきたら,彼らは何を基準に判断するだろうか?それは成長率や赤字幅削減ではないだろう。社会的弱者をどう守ったか,コミュニティにとって最も基本的なニーズ,すなわち医療,住宅,仕事といったニーズにどこまで応えられたかといった点ではないだろうか?
どの社会でも,最も大事な資源はその構成員,つまり人間である。したがって健康への投資は,好況時においては賢い選択であり,不況時には緊急かつ不可欠な選択となる。
デヴィッド・スタックラー,サンジェイ・バス 橘 明美・臼井美子(訳) (2014). 経済政策で人は死ぬか?:公衆衛生学から見た不況対策 草思社 pp.243-244
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