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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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1クラスの人数

ベビーブームのころ,シェポーバレーの1クラスの人数は25人だった。いまは15人だ。ふつうに考えれば,25人より15人のほうが教師の目が届くし,教師の目が届いたほうが学習の質もあがる。結果として生徒の学力は,混みあっていた時代より高くなる——はずだ。
 それが正しいかどうかを確かめる明快な方法があった。コネティカット州には,シェポーバレーと同じような学校がたくさんある。もともと小さい町が多いので,出生率や地価の変動の影響を受けやすい。ある学年の生徒数ゼロという年があったかと思うと,翌年は教室が満杯になることもある。一例として,コネティカット州のあるミドルスクールで,5年生の人数を年ごとに追うとこうなっている。

 1993年 18人
 1994年 11人
 1995年 17人
 1996年 14人
 1997年 13人
 1998年 16人
 1999年 15人
 2000年 21人
 2001年 23人
 2002年 10人
 2003年 18人
 2004年 21人
 2005年 18人

 2001年に23人だった5年生が,翌年はたった10人になってしまった。もちろん学校の状況に変化はない。校長以下教師の顔ぶれはいっしょだし,校舎も使う教科書も同じだ。町の人口に大きな変動はなく,経済状況も変化なし。ちがうのは5年生の数だけだ。したがって2002年度の5年生の成績が2001年度より明らかに向上していたら,クラスの規模が関係していたと言えるだろう。
 これがいわゆる「自然実験」だ。科学者は自らの仮説を立証するために実験を組み立てるが,あえてそうしなくても,仮説の真偽をたしかめられる社会状況が出現することがある。ではコネティカット州ではどうだろう?経済学者のキャロライン・ホクスビーは,コネティカット州内のすべての小学校を対象に,少人数クラスとそうでないクラスの生徒の成績を比較した。結果は——差はなし。ホクスビーは書いている。「政策の変更後,統計的に有意な差がでなかった例はたくさんある。今回の研究でも,差はゼロに近い予測だったが,結果は完全にゼロ。つまりちがいはまったくなかったのである」。

マルコム・グラッドウェル 藤井留美(訳) (2014). 逆転!強敵や逆境に勝てる秘密 講談社 pp.44-46
(引用者注:日本の教室人数のほぼ半分であることに注意。30人以上など想定外)
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