大きな池の小魚か,小さな池の大魚か——その選択肢を考えるヒントとして,もうひとつ例をあげよう。あなたは大学関係者で,大学院卒の優秀な研究者を採用することになった。そのとき一流大学院卒と条件を限定するか,それとも大学院のランクに関係なく,トップの成績だった人間を選ぶか。
たいていの大学は前者だ。当校は一流大学院の卒業生しか採用しませんと胸を張る大学さえある。しかしここまで読んできた人ならば,さすがに疑問を抱くだろう。小さな池の大きな魚は,大きな池の小さな魚よりそんなに下なのかと。
大きな池と小さな池を比較できる簡単な方法がある。ジョン・コンリーとアリ・シナ・オンデルは,経済学の博士課程修了者を対象に調査を行なった。経済学の世界には,研究者なら誰もが読む権威ある学術誌がいくつかある。こうした専門誌は独創性のある優れた論文しか受け入れないので,その掲載回数が評価のものさしになる。コンリーとオンデルが調べたところ,並の大学の優等生のほうが,一流大学の並みの学生よりも掲載回数は多いことがわかった。
ハーバードやMITの卒業生を採用してはいけない?これにはさすがに誰もが首をかしげるだろう。だが分析結果を見ると反論の余地はない。
マルコム・グラッドウェル 藤井留美(訳) (2014). 逆転!強敵や逆境に勝てる秘密 講談社 pp.85-86
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