心理学では性格を把握するときに「5因子モデル」,別名ビッグ・ファイブを用いる。次の5つの特性に関して,どんな傾向にあるかを評価するのだ。
情緒不安定性(敏感/神経質 安定/自信)
外向性(精力的/社交的 孤立/内気)
開放性(創意/好奇心 保守的/慎重)
勤勉性(規律/熱心 怠惰/不注意)
調和性(協力的/共感 自己中心的/対抗心)
心理学者ジョーダン・ピーターソンは,革新的な人間はこの5つの因子のうち,最後の3つ(開放性,勤勉性,調和性)の組みあわせに独特の特徴があると指摘する。
自分の殻に閉じこもっていては,革新的なことはできない。他人ができないことに想像をめぐらせ,自らの先入観を揺さぶる必要がある。勤勉さも大切だ。いくらアイデアが良くても,それを地道に実践する自制心とねばり強さがなければ,ただのドリーマーだ。ここまでは納得がいく。
そして3つめの調和性だが,革新者に求められるのは調和性というよりも,むしろ非調和性だ。ケンカを売ったり,周囲を不快にさせるのではないが,誰もやろうとしないことにリスク承知であえて挑戦するのだから,むしろ調和性とは対極ということになる。
それは容易なことではない。非調和な人間がいると,社会は眉をひそめる。それに人間には,周囲から承認されたい本能がある。それでも,社会を変える力がある斬新な発想を実現するには,これまでのしきたりを壊す気概が必要だ。
マルコム・グラッドウェル 藤井留美(訳) (2014). 逆転!強敵や逆境に勝てる秘密 講談社 pp.113-114
PR