まず「消費期限」と「賞味期限」の違いについて確認しておこう。農林水産省のウェブサイトによれば,消費期限とは「食べても安全な期限」である。対して賞味期限とは「おいしく食べられる期限」である。図1-1のように,これらは品質の劣化が速いか遅いかによって区別する,というのが農林水産省の説明である。お弁当や生和菓子などの保存がきかない食品に表示されるのが消費期限(おおむね数時間から5日),加熱処理などが施されていて冷蔵や常温で保存がきく食品に表示されるのが賞味期限というわけだ(なお,期限が意味をもつのは食品の包装を開けるまでの間である)。
では,これらの期限を過ぎてしまった食品は,どうすればよいのだろうか。消費者庁はそれぞれの期限について,次のようにまったく違う対応を呼びかけている。
「期限を過ぎた食品は食べないようにしてください」(消費期限)
「期限を過ぎても必ずしもすぐに食べられなくなるわけではありませんので,それぞれの食品が食べられるかどうかについては,消費者が個別に判断する必要があります」(賞味期限)
農林水産省や消費者庁の考え方をまとめると,消費期限は食品の「安全」を保つ,すなわち下痢や食中毒などの健康への悪影響をできるだけ低く抑えるための基準,賞味期限のほうは安全というよりは味が落ちるか否かを気にする人のための目安であり,それぞれを保存できる日数の長短により区別しよう,ということになる。
村上道夫・永井孝志・小野恭子・岸本充生 (2014). 基準値のからくり:安全はこうして数字になった 講談社 pp.25-26
PR