多くの食品は,それぞれ生菌数の上限値が決められている。罰則があるものとしては「食品衛生法による食品別の規格基準」,また,罰則のない自主規定として,厚生労働省が示す「衛生規範」や地方自治体が示す「指導基準」がある。だが食品によっては,かなり高い生菌数を認められているものがある。たとえば弁当や惣菜は,1g当たりの上限値が加熱食品では10万個だが,非加熱食品では100万個まで認められている。やはり非加熱食品の生和菓子は,東京都では50万個まで認められている。加熱しないかぎり数を減らすことはできないが,加熱したら別な食べ物になってしまう(!)というジレンマの中で,このくらいなら製造者がなんとか達成できるだろう,という現実的な観点から決められているのである。
いずれにせよ,非加熱食品の基準値は腐敗がみられる生菌数の10分の1でしかなく,安全のための余裕はほとんどないだろう。
村上道夫・永井孝志・小野恭子・岸本充生 (2014). 基準値のからくり:安全はこうして数字になった 講談社 pp.30-31
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