カナダの食品検査庁は2001年に,ひじきは発がん性のある「無機態のヒ素」の含有率が非常に高いので,消費を控えるよう国民に勧告している。また,英国の食品基準庁も2004年に,やはり無機態のヒ素が含まれているとして,ひじきを食べないよう勧告した。香港やオーストラリアも,この流れに追随している。
ヒ素は海藻類や魚介類に多く含まれていて,これらを多く摂取する食文化がある日本人は,諸外国と比較するとより多くのヒ素を摂取している。ただし,ヒ素の毒性はその化学形態が無機態か,有機態かによって異なり,毒性が問題になるのは無機態のヒ素である。海藻類や魚介類中のヒ素はほとんどが有機態であり,無機態のヒ素の割合は数パーセント以下である。ところが,ひじきだけは無機態のヒ素が約60%と非常に高い割合になっていることが調査で明らかになり,ひじきがとくに問題視されるようになったのである。
村上道夫・永井孝志・小野恭子・岸本充生 (2014). 基準値のからくり:安全はこうして数字になった 講談社 pp.55-57
PR